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小説

「朱の記憶 亀倉雄策伝」 日経BP社刊
著者御挨拶

2014年度、東京ADCのパーティーで、殿堂入りした松永真さんのスピーチを聞きながら、さまざまなグラフィック・デザイナーの仕事を通して、昭和という時代を誰かが書かないと、その時代に機能したグラフィックそのものが、忘れられてしまうと痛感しました。その牽引者であった亀倉雄策は、これまでどう書かれてきたのか。正月休みは彼の評伝を読むことに充てました。

そして、驚きました。

亀倉雄策の評伝が世の中には一冊もないのです。今年は氏の生誕百年にも関わらず、その出版企画さえありません。

同時代を生きた丹下健三に五冊の評伝があり、一方、亀倉雄策に一冊の評伝さえない。その事実に呆然としました。

私の中に寂寥感とも焦燥感ともつかぬものが、溢れました。

75歳の亀倉雄策が、5年間20冊に亘たる『クリエイション』編集を始めるにあたって、「バウハウスのデザイン誌に触発されてデザインの世界に入った自分こそ、世界中のデザインを志す人に、現代におけるデザインとは何かを、提示する義務がある」と感じその編集業務に携わったように、40数年、広告・グラフィックに育てられた私は、いまこそ、亀倉雄策を通して、この仕事のもつ意味を、社会に提示しなければとの想いに駆られました。

その焦燥感に追い立てられるようにして、書き綴ったものがようやく昨年の東京ADCパーティーから一年を経て形になりました。「朱の記憶 亀倉雄策伝」。この本は、私の想いと志を同じにする多くの人々のご協力に支えられて生まれました。

この間すこぶる健康であった自分の身体が、進行癌に冒され、胃全摘手術に至るとも知らず、まさに身を削る一冊となりましたが、いまは、その命の灯があるうちに、自分が歩んできたプライドある広告・グラフィック界の、それも一番輝いていた時代を書けたことに、感謝しています。

馬場マコト

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