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馬場マコト業界全発言

[朝日広告月報]1996年7月号
三つの色の愛
連休の雨の日、一日ビデオに耽るにはなにがいいか悩んだ末、クシシュトフ・キェシロフスキ監督のトリコロール《青の愛》、《白の愛》、《赤の愛》の三部作をまとめてみることにした。

「あなたの愛は何色ですか」という惹句のもとに、連続上映したものを劇場で見ていたが、まとめて見ることで監督の描きたかったことを確かめたかった。

三部作といってもそれぞれの話にテーマの統一性はない。しかしそれぞれの主人公が瞬間的に交錯し、三作が連鎖する。トリコロールはヨーロッパがEC諸国としてひとつになったことから生まれる一体感と、人と人の新しい出会いの軋みを描いている。

その軋みを一番感じさせるのは第一部の《青の愛》。交通事故で亡くなった作曲家が書いていた欧州統合祭のための協奏曲は、実はその事故でただ一人生き残った妻ジュリエット・ビノシュの作品ではなかったのか、という謎をはらんで物語は不安定に進行する。《白の愛》は自由化のパリに馴染めず、トランクに入って祖国ポーランドへ帰ろうと企てる男の悲喜劇。《赤の愛》はジュネーブに住む女子大生と老判事が確執と共にイギリスへ向かう。トリコロールはもはやヨーロッパがそれぞれの色の国ではなく、ひとつの色の国になったにもかかわらず、それぞれが、それぞれの色を発色し、発光せざるをえない、強さと哀しみを描く。

三部作を通しで見ると、見えてくるものがある。色は決して一色ではないとクシシュトフ・キェシロフスキ監督は言いたかったのかもしれない。

で、惹句の質問に私自身が答えるとしたら、私は文句無しに《青の愛》が好きです。
  
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