ようこそ「一人広告代理店」馬場コラボレーションへ

馬場マコト業界全発言

[朝日広告月報]1996年8月号
色気の「色」
石原慎太郎の「弟」(幻冬舎)がなかなかの人気を集めている。発売以来わずか2週間で八十万部を突破したというから、最近にない本の超ヒット作といえるだろう。

幻冬舎という新しい出版社は唐沢寿明の「ふたり」といい「弟」といい、既存の出版社が忘れた大衆の心を掴むなにかを感覚的にもっているように思えてならない。幻冬舎。名前からして気になる、本屋店頭で匂い立つ何か独特の「色気」をもった新しい会社の登場である。

で、その「弟」をさっそく読んだ。これは男の「色気」についての小説だ。裕次郎という、気がかりで人の心をつかむ、匂い立つ存在とはなんだったのかを模索する巡礼の旅であり、鎮魂歌である。「お前(慎太郎)はいつもきちんとして男前だったけど、あの子(裕次郎)はお前に比べれば不細工な顔をしてたわね。でも子供の頃から目が、目だけはいつもきらきらと奇麗な子だなあと思っていたのよ」という二人の母の言葉に裕次郎のすべてが潜んでいるように思う。小学6年の私は、彼のデビュー作「狂った果実」以来中学3年間、裕次郎という存在に引きずられるようにして映画館に通った。その暗闇からは周りの大人たちの誰もがもっていない何かが匂いたち、濃密な空間を作っていた。その気がかりさ、匂い立つもの、圧倒的な存在感こそが「色気」であり、それは裕次郎の死後10年がたっても色あせていない。

ページを開くだけで匂い立ってくる何か。新聞広告では、そういう意味での「色」も重要だ。そんな圧倒的な「色気」を果たして、私は新聞広告の中に作りえているだろうか。
  
▲ ページトップへ