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馬場マコト業界全発言

[宣伝会議]1996年8月号
広告は社会に対して何ができるのか
部屋の席のまわりには、写真やイラストなどいろいろなものが貼られている。CM撮影で海外に行く時、またプライベートでどこかを訪れる時も、自分では写真は撮らない主義。その場でしか体験できない空気や風景を、しっかり目に焼きつける。今回は馬場氏にクリエイティブ生活に迫る。

物事の本質を、豊かに、優しく、恥ずかしがらずに伝えること

テレビCMに新風をもたらした、あのエイズキャンペーンから4年。当時はエイズという言葉にでさえ、たいへんな偏見が持たれていた時代だった。広告主の情熱に心を打たれ、20人の有名俳優、タレント、文化人らに協力を申し出てボランティア出演してもらう企画が実現。このCMは、広告に何ができるかを世間に問いかけ、解答を出すことになった。
今日において、メディアの持つ力の大きさとその役割はもっと重視されていいはずだ。広告もメディアであるとすれば、広告が何をすべきかを考える必要がある。 イギリス国営放送が「世界の100本」という映画の選定を行ったところ、日本からは2作品が選ばれた。それは小津安二郎監督の「東京物語」と北野武監督の「ソナチネ」。世界の人間が共通言語として理解できるのが、家族、愛、死、暴力、であることの証である。
しかし、本来広告は、いやな気持ちを人に与えるものであってはいけない。これが馬場さんの広告制作のモットー。だから「広告で、豊かさや優しさ、正直さなど時代が変わっても変化しない共通のテーマを、恥ずかしがることなくしっかりと伝えていきたい。そして、広告にどんなことができるのか、広告の機能や力を示せるような仕事にチャレンジしていきたい」という希望を持っている。
広告を通して、社会問題を考える時代に育ってきた若者たちは、そんな馬場さんの思いを肌で感じ、共感を覚える。広告が生活者や社会に与える影響を真面目に考えなければいけない環境の中で、広告を媒介に社会とコミュニケーションすることの重要性、広告が社会にいかに機能しているか、広告が何かを解決する手段になるかどうかを日々の仕事の中で考えている。
広告が産業として成熟していく大切な時期にあって、「広告には無限の可能性があるからこそ、謙虚さと倫理観をもって、自由な表現を創り出していきたい」と広告への情熱を抱く。

東京・新宿にある「ロフト・プラスワン」で行われたトークショーで、大学生を対象に広告の話をする馬場さん。広告クリエイターを目指す人たちに、「広告は社会と関わる場です。企業を語る場合も、商品を語る場合も、倫理観をもって広告でどんなことを伝えていけばよいのかをしっかり考えられる人間になってほしい」とのメッセージを送った。

万人に平等に与えられた時間をいかに活性化して使うか

著書「銀座広告社第一制作室」にも登場する銀座のバー・アイリーン。小説の出版を祝って集まった。「馬場組」のスタッフたちと。馬場さんはここでお金がなくなると飲み代がわりにカウンターに入ってバーテンダーをしている。出版、広告はじめ様々な業種の人たちとのコミュニケーションは、自然にアイデアとして蓄積されていく。
「人間は、基本的に不平等にできている。しかい、神は唯一、平等なものを人間に与えた。それは時間である。」 仕事はもちろんのこと、ジョギング、読書、映画、酒、茶道・・・と、興味のある領域は幅広い。茶道歴30年、毎昼休みのジョギング歴は20年、そして年間100本の映画を見る。20代の頃から1日24時間を活性化して生活することをモットーに「こだわりの人生」を送っている。これと決めたものには徹底的に取り組むが、時間の無駄や面倒なことを排除するために、放棄する分野もある。その1つがファッション。全身黒づくめのファッションがトレードマークだが、気に入ってるブランドは1つ。ジョギングをしていてサイズも変わらないため、買い物に行かなくて済むからというのが理由。
そして、このような日常の生活の中で、素直にいいなと思ったことや感激したことを広告表現にできないかと考える。例えば、J・Fケネディとクリントン少年が握手をした劇的瞬間の写真を使った、富士写真フィルムのCMがそうだ。最初、報道番組でこの事実を知り、少年のそのごの人生を決める運命の出会いに感激した馬場氏は、即座に「一枚の写真」をコンセプトにした広告表現を思い付く。これは、現職の米大統領をCMに登場させて、大きな話題を呼ぶことになった。
  
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