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馬場マコト業界全発言

[ブレーン]1999年2月号
日経ケーススタディ「企画競合」とはなにか
12月1日の日経新聞はひさしぶりになかなか壮観だった。規制緩和の一環でいよいよ日本でも証券だけでなく、信託、銀行でも投資信託の販売が可能になったいわゆる金融ビッグバン。めくってもめくっても投資信託の広告のオンパレード。なんとその数18社。投資信託を作る側のいわゆるメーカーの広告もあれば、新規に投資信託をとりあつかうことになったいわゆる販社側の広告と視点はさまざまだがいよいよ日本版ビッグバンが今日から始まり、投資信託の販売が開始されたということを告知することには本質はかわらない。新しいページをめくり、同じような広告が続くに従って、これは広告ではなく、なにかのケーススタディとして学ばないといけないのではないかと思いだした。

そうだこれは18社の広告会社企画競合の結果を一斉に紙面発表したものなのだ。競合コンペが日常的な得意先の宣伝部は日頃集まった各社の競合案を一斉に席上に集め、「ああ同じアイデアをA社とB社が考えたか、おおC社は企画に詰まって困ったときの青い空を持ち出したぞ、おおD社はなんとこんな視点からうちの商品をみてくれたか、4社競合の中で新しい視点で企画をブレイクスルーしてくれたD社に決定しようか」ということになるのだろう。

その一斉に各社のアイデアを席上に並べてみるという機会は逆に広告会社、企画会社の人間にはほとんどない。一度宣伝部の身になって一堂に会した各社の企画案を見、企画が選考されていく過程をみてみたいと常々思っていた。

そう、この12月1日の日経新聞の投資信託一斉広告こそ、実は得意先の宣伝部の席上ではなく、新聞紙上に並べられた各社の競合企画案なのだと思いだしたら、この広告の見方が突然変わってきた。

なるほど日興投資信託、フィデリティ投信、野村アセット・マネジメント投信という広告会社の企画はキャッチフレーズは違うといっても、企画の切り口は各社取り扱い銀行を告知するというもの。住友信託、東洋信託という広告会社の企画は無難なアイデア、これでは各社の競合の中で埋もれてしまいそうだ。第一勧銀、東京三菱という広告会社の企画はこれで競合に参加していいのと考え込んでしまうような全15段のチラシ化。そして住友銀行とシティーバンクという広告会社の企画は困ったときの青い空を持ち出してきてしまった。ビジュアルの受けを狙って企画競合に参加したのが第一生命という広告会社の企画というところだろうか。

そんな中でさくら銀行という広告会社の企画はティーザー、本告と総合企画だったが同時に大量のタレント動員というとてもバブリーな過去の方法論を新しいビッグバンになっても持ち込んでしまったという印象が消えなかった。そんな中で光っていたのはプレデンシャル三井というメーカーと販社である三井信託の視点を別にしたそれぞれの企画。「等身大の投信」というキャッチフレーズはこの新しい商品観をよく表しているし、投信に不信感、不安感を持つ高年齢、高所得のターゲットに吉衛門というキャラクターで応えようという戦略は18社の中にはない提案だった。

こんなふうに考えていくと一斉に紙上公開された18社の企画はさくら銀行という広告会社とプレデンシャル三井・三井信託連合広告社の最終企画競合となり、最終的にはプレデンシャル三井・三井信託連合広告社に軍配が上がり担当広告会社が決定するのかもしれない。

そう12月1日の日経新聞は企画マンたちに同じテーマの元でアイデアをブレークスルーしていくとはどういうことか、競合の企画はどのように絞りこまれていくか、プレゼンテーションとはなにかということを教えてくれた。

「日本版金融ビッグバンの時代来たる」

それがこの一年の掛け声だった。その掛け声に相応しいアイデアにあふれた企画を各社は紙面一斉公開競合に提案したのだろうかとつくづく思いだしてしまった。これでは得意先の宣伝部はなかなか企画を決定できないかもしれない。
  
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