ようこそ「一人広告代理店」馬場コラボレーションへ

馬場マコト業界全発言

[CM通信]1999年11月20日号
JACセミナー、岡康道、馬場マコト両氏を迎えクリエイティブの〈今後〉について議論
日本テレビコマーシャル制作社連盟(JAC)は11日、コダック・テクニカルセンターにおいて〈JACセミナー〉を開催した。今回のテーマは「どうなるのか、これからのクリエーティブ」で、講師はこの夏に大手広告会社から独立し、クリエイティブ・エージェンシーを目指すとしてそれぞれの活動を始めた馬場マコト(馬場コラボレーション主筆)、岡康道(タグボート代表)の両氏。跡部安司・人材育成委員長(ハット代表)の司会のもとに、クリエイティブ・ビジネスに対する思いや、プロデューサーを始めとする制作者との協働について語った。以下は、同セミナーでの発言要旨である。

「CDとはなにか」を問うことで、始まるビジネス

岡:独立した理由は三つ。まず、日本の広告界の中で制作に関してそのフィーを確立したいということ。広告会社が扱うコミッションに企画料は含まれているのだ、という従来のルールにどうしても納得出来かねる思いがある。二つ目は、僕自身の「値段」は幾らなのかを世に間うことで、クリエイティブ・ディレクターとは一体何者なのかを明らかにしてみたいと思った。そして三つ目は、自分自身に対する反省。"やる気"等ということは本人しか判らないことだが、わざわざ転職試験を受けて制作に来たからには、あくまでも"カッコイイ"制作者であり続けたいと思っている。

馬場:管理者としての職務を辞表を提出する直前までこなしての独立。数ヶ月前から退社することは決めていたが、誰に相談することも出来ず、止めてどうなるかの目算があった訳ではない。ただ、管理職を数年間務めて思うことは、クリエイティブ・ディレクションというからには、やはり現場にいないと駄目だということ。5年間のブランクを経て、正直現場に戻る怖さはある。でもこのままでは自分自身が錆び付いてしまうという危機感の方が勝り、独立することにした。

「フィー」のベースはなにかを議論

岡:クリエイティブ作業のフィーは幾らが妥当なのか。そのベースとなるものが無いというのが現状で判らない。少なくともプロダクション・フィーは参考にはならない。高くても困るし・安すぎても困る、と関係者で議論している最中だ。

馬場:クリエイティブ・ディレクターという役割がある以上、書類にその該当項目はあるべきだと考えるが、広告会社が用意する書類には無い。だから社員であった時は、毎回書類を作成する度に、自分でペンで記入し続けた。最後は▽印で値引きでも構わないからとにかく項目を残すことに固執してきた。
実はこれまでも広告会社以外の人間が実質的なクリエイティブ・ディレクターを務めてきたことがあった。しかし、その場合の費用はクリエイティブ・ディレクションでは無く、コピーライター費あるいは演出費という項目で計上してきた。そうした請求は止めるべき時代に来たと思う。

岡:2002年6月まで電通とは専属契約を結んでおり、クライアントからの直接依頼は別にして、他の広告会社の仕事は出来ないことになっている。料金については、仕事の前に金額を決めることを原則としている。

今後の展開について

馬場:自分自身の文法・文体でもって競合生き残りゲームに参加するつもり。プレゼンの場に電通がおり、タグボートがおり、馬場コラボレーションもいるという状況になった時にはじめてクリエイティブ・エージェンシーが成立したといえるのではないか。今は広告会社各社とはパートナーシップを組ませて頂きたいとお願いしている。といっても、東急Agcがもっている得意先の場合は、東急Agcを優先することになる。馬場マコトの「方法論」を必要とされるところに提供していきたい。まずは実績を積むしかない。

岡:タグボートがスタートして19本を制作。ギャグ系は多田、ギャグ以外は岡、二人に余るところは麻生がという大まかな役割分担をしているが、これまではスムーズにきている。それぞれ生活がかかっているだけに、ハードに仕事をこなしている。〈以前より激しくなった、良くなった〉と認められないことには仕様がない立場を選んだ。あるレベルを保ち続けることが僕らの至上課題であり、失敗している余裕はない。

馬場:CDはキャラクター・ディレクターだと思っている。クリエイティブのナンバー1になる必要はなく、それぞれがエッジの尖ったオンリー1であれば良い。そうしたCDが360人いれば、クライアントはそれぞれの文法・文体に合うCDを見極めて仕事が出来る。
最近の状況をみると、広告会社におけるクリエイター組織の細分化、あるいは組織からの離脱・独立といった傾向は加速しそうな事情があり、そうなるとフルネームで活躍するキャラクター・ディレクターが一挙に増え、もしかしたら来年2000年というのは面白い年になるかもしれない。これまで広告会社の経営の根幹であったコミッション・ビジネスについても、大きな変革が起きそうな気配がある。

プロダクションとの関係

岡:広告会社の人間が企画を考えるのは当然で、その企画をディレクターに渡したら、ディレクターに任せるべきという「教え」を受けてきた。意見があったら制作会社のプロデューサーを介して言うものだと思っている。今でも現場では後方で目立たないようにしている。しかし後の世代は違うようだ。プランナーとディレクターとの距離が変わってきた。

馬場:僕自身も現場では発言しない。現場はプロの技術者の場であり、指示はPPMで徹底して終わっている。その通り進行しているかどうかをチェックするのが現場だ。もし発言があるとすると、プロがプロの技術を提供していない時で、PPMの約束が守られていない時だ。ゴールのチェックをするのが役目だと思っている。

岡:最近ディレクターは「広告」を勉強しすぎて、結果つまらなくなっていないか。本来は「表現」に特化すべき人達であり、なにが「広告」かは僕がチェックする。制作会社のプロデューサーもそう。広告会社の営業と仲良くするのが仕事だと勘違いしている人間もいる。いい表現をするには、スタッフに誰を選べばよいのか、どのように撮影すればよいのか、をプロデューサーには真剣に考えて欲しい。
昔は映像に関する知識はディレクターとプランナーとでは格段の違いがあったのに、今は同じレベル。プロであるならディレクターにはもっと映像について勉強して欲しい。自分より詳しくない人間には頼まないことになる。少し異常な位のエネルギーがないと、世の中を動かすなんて事は無理だ。

馬場:プロデューサーには「情報」を持ってきて欲しい。それを加工して売り物にするのが自分の役割だと思っている。
  
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